アカの中にいるあの方は、とても綺麗だと思った。


一瞬で空気が変わるのがわかった。
ふりむくと、そこには何か不思議なモノがいた。
「……だれ。」
由貴は尋華を守るように引き寄せた。
白銀の雰囲気を持った不思議なモノ。
それは由貴の前に跪いた。
「お迎えに、あがりました。」
おむかえ…コレは天使なのだろうか。
「……ひろかを、つれてっちゃうの?」
由貴は誰にも渡さないとでもいうように尋華を強く抱きしめた。
「いいえ。貴方様です。」
白銀のモノが言う。
「ぼくだけ?」
由貴が問うと、ソレは頷いた。
「……ひろかは?」
わずかにトーンの下がった声に白銀は少し怯えたようだった。
「……その方は、もう、その………」
亡くなられている。
白銀のその言葉に、由貴は怒るわけでもなく淡々と返した。
「尋華はいるよ。生きてるんだよ。」
白銀は何も言えなかった。
「だってほら、ご飯も食べてるし。」
由貴の静かな様子に、白銀は恐怖を覚えた。
「ッいいえ、食べていません。口に入れることもできず、口に入っても飲み込むこともできず…動きませんし呼吸もしていません………」
恐怖を払うように強く言うが、だんだんとその語調は弱くなっていく。
そんな白銀の言葉など聞いていないかのように、由貴は淡々とした様子を崩さず、笑みさえもうかべた。
「僕は尋華のお兄ちゃんだから、お兄ちゃんは妹を1人にしちゃいけないんだよ。僕は尋華とずっといっしょなんだ。生まれたときからずっと、一緒なんだよ。」
白銀は恐怖で何も言えなくなってしまった。
そこへまたもう1つ、何か不思議なモノが現れた。
今度は風の雰囲気である。
「落ち着け、慧架。」
風のモノの言葉に、白銀―慧架は我に返った。
「あ、…ありがとう、虎夏。」
風の―虎夏はそれにいちべつを投げるだけで、すぐに由貴の前に跪いた。
「失礼いたします。」
そう言って虎夏は尋華に手をかざした。
すると、光が集まり尋華は消えてしまった。
「!!ーッひろかをどこへやった!!!」
由貴は怒鳴る。
「落ち着いてください。その方ならば、こちらにいらっしゃいます。」
虎夏が示す先に、熊のぬいぐるみが浮かんでいた。
「ひ…ろか……?」
尋華と同じ蒼の瞳。
「…ゆき。」
ぬいぐるみがしゃべった。
「由貴、時間がないの、聞いてくれる?」
尋華の声だ。
時間がないとはどういうことだろう。
わからなくて、由貴は首をかしげた。
「これをあげる。」
そう言ってきれいな蒼の珠のついたネックレスを出した。
「これはあたし。あと少ししか話せないの。だけどいつもそばにいるから。」
尋華はそれが自分からつくられたのだと言った。
「もう、おわかれだから…」
「なに、を…いってるの?」
意味のわからないことを、尋華は言う。
「まもってくれてありがとう。あたしはもう、大丈夫だから。」
そしてだんだん透けてきていた。
「まって、ひろか」
いやだ、そんなこと言わないで…由貴はすがるようにいう。
しかしそれもお構いなしに、尋華は離れてもずっと一緒だよと言って消えてしまった。
「―ッいやだ、やだっ」
由貴は絶望した。
「いやだっおいていかないで、ひろかッいや、や!」
錯乱する由貴に慧架が手をさしのべるも、ぱしりと払われてしまう。
暴れ続ける由貴にどうすることもできないと判断した虎夏は、そっとため息をついて意識を失わせるコトバを呟いた。




――――――

すっごく病んでますね。
なんでこんなになっちゃったんだろ、ってわたしも不思議です。
このシリーズはみんな病んじゃいそうです。


執筆日2010.08.04
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