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ふう、と誰かがため息をついた。

錯乱する由貴を眠らせた慧架と虎夏は、とにかくそこを離れようと自分達のすみかへとつれて帰った。
そこのとある部屋に由貴は寝かされていた。
「由貴様はまだお目覚めにならないのか?」
部屋に入ってきた虎夏がきく。
それに答えたのは、由貴の眠るベッドのそばに座っていた炎の雰囲気を持つ朱埜だった。
「まだ眠っておられますよ。」
「そうか…」
そう言って虎夏はベッドの近くによった。
「早く、目覚められるといいのだが……」


ここはどこだろうか。
由貴はゆっくりと目を開けた。
あたり一面の白。
まるでぷかぷかと浮かんでいるような感覚。
いや、実際に浮かんでいる……
由貴は横になっていた体をゆっくり起こすと、その目の前でなにか細かいものが集まっていくのを見た。
集まったそれは人の形をしていた。
「……由貴。」
小さくもよくとおる声。
「だれ……?」
由貴もまた呟いた。
それはほぼ同時のことだった。
人かたのそれは、一度まばたきをして一拍おいてから話し始める。
「由貴、私は空間を管理するものだ。」
「くうかん……?」
由貴は理解できていないのか、首をかしげた。
「……ヒトは私のことをよく神と言うな。」
「かみさま……。」
「だが、ヒトの言う神とは違うだろうな。私はなにもしない、なにもできない。ただ世界が生まれ、滅びゆくのを見ていることしかできない。」
眉をハの字にして自嘲気味にそれは笑った。
しかしそれはすぐに変化する。
「だから私は、私の手足となり世界に干渉するための人間を選んだ!……そう、それが由貴。お前だよ。」
興奮したように高らかにいいあげたと思ったらすぐに穏やかになる。
由貴はポカンとした呆けた顔をした。
「ぼく……?」
「そう。…正しくはお前だけではないけれどね。お前と同じように選ばれた者が何人かいる。」
まあいずれ会うことになるだろう、と楽しそうに笑ったが、由貴は気づかずに気のない返事をした。
「ふうん……」
そんな由貴の様子に苦笑する。
「さて、お前はもう慧架たちに会っただろう?」
「けいか?だれ?」
こてんと首をかしげる。
「白銀の、といえばわかるか?」
「白銀……ああ、あれ。」
思い起こすのは先程であった不思議な存在。
「あれらは私からの贈物だ。お前の忠実な僕となるだろう。」
「しもべ……。」
「そう。お前のものだ、好きに使うがよい。」
それは微笑みながら言った。
「では、私は戻るとしよう。」
そう言い残してそれは消えた。
残された由貴は、ぷかぷかと浮かびながら眠くなるのを感じた。
その眠気にそのまま身を委ねる。
そうして由貴が目を閉じると、由貴もその空間から消えてしまった。





――――――




執筆日2011.05.22
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