とあるところに、ソレはいた。
あった、と表現すべきか。
わからない。
しかしソレはたしかにそこに存在していた。
ソレはひとつだった。
そこには大きく透明な箱とソレがひとつずつ。
他には何もない。
しかし箱の中には小さな、ビー玉のようなものがたくさん浮かんでいた。
そのビー玉は、砕けて塵になってはまた集まりビー玉になる。
それが繰り返しくりかえし、行われていた。
ソレは箱の中身をずっと眺めていた。
それからどれくらいの時間がたったのか。
ほんの数秒、あるいは何億年という数えきれないほどの時か。
そこには時間など存在しないからわからない。
ソレはビー玉が世界だと気づいた。
そしてそこにはたくさんの生き物がいることにも気づいた。
中でもヒトという生き物に、ソレは興味を持った。
その時、己のチカラを知った。
箱には何もできない。
ビー玉をいじることもできない。
しかし、ヒトなどの力の強いものに己のチカラを分け与えることができることを知った。
小さなモノになら干渉ができる…。
ソレは沢山のモノに、チカラを分け与えた。
チカラを分け与えたものに、たくさんのことをさせた。
ソレは、モノで遊ぶことを覚えた。
しかし、ある時箱の中にチカラが充満しすぎたことに気づいた。
チカラはモノが廻りめぐっても残るのだ。
だからソレは廻るものを壊すことにした。
同じくチカラを持つモノに壊させるのだ。
ソレはその事さえも遊びにした。
楽しいというモノの持つ感情というものも覚えた。
またどれくらいたったのか。
ソレはお気に入りを見つけた。
お気に入りに何をさせようか。
そしてソレは、あることを思いついた……。




――――――

とあるお話です。


執筆日2011.01.20 ブラウザを閉じてお戻りください。