あたしにとって、眞は絶対だ。
眞は、あたしを暗闇から救い出してくれた。


橙の炎はゆらめく


あたしは物心ついた頃から霊が見えていた。
だからそれが普通の人には見えないということを知らなかった。

あたしには4つ上の兄がいる。
兄はいつもあたしと一緒にいてくれた。
「あのね、ママ。きょうもおにーちゃんが来てくれたの!」
あたしは嬉しそうに母に話す。
「お兄ちゃん?」
母は怪訝そうに言う。
あたしはその意味がわからず、まだ嬉しそうに言った。
「うん。みーのみつのりおにーちゃん!」
この言葉に、母の顔は真っ青になった。
「え…そんな…みつのりはもう、いないのよ!?」

そう、兄はもう死んでいた。
あたしが生まれてすぐに死んでしまったのだ。
でもあたしはその事を知らなかったから。
「ママ?お兄ちゃんいるよ?」
「……ッもうしゃべらないで!!」
母がヒステリックに叫ぶ。

…あたしはバカだった。

それから、母はあたしがしゃべることを嫌った。
あまり出ることのない外も、全く出ることがなくなった。
そしてその後のある日、あたしは今もつ霊使いの能力ともう1つの能力、発火能力までもを覚醒させてしまった。
「きゃああああああっ」
母が叫ぶ。
その声を聞いて、父もやってきた。
そしてあたしの方を見ていった。
「な、な!?どうしたんだ!その手!!」
「おてて?」
あたしは首をかしげる。
「ち、近寄らないで!この化け物!」
あたしの手を炎がつつんでいた。
「どうしてなんだ。みつのりをなくし、お前までこんな…」
父は絶望したように言った。
「ママ?パパ?」
「そんな風に呼ばないでちょうだい!もう嫌!でてって!」
母は気が狂ったように叫んだ。
「あの子はうちの子じゃない、そうよね?そうだわ!」
「ああ、そうだ。…ほら、でていけ。お前はうちの子じゃないんだ。でてけ!」
母の肩を抱いて慰めていた父は、母に同意したあとあたしに向かって言った。

…感じてはいた。
母も父も、あの日からあたしを否定していたことを。
あたしは必要ないんだ、いちゃいけないんだ、そう心のどこかで思っていたことを…

あたしは家を飛び出していた。
外は暗くて怖かったけど、涙は出てこなかった。
そのときだ。眞が目の前に現れたのは。
「こんな時間に、1人でどうしたの?」
あたしの手はまだ火に包まれていたのに。
そんなことを気にせず話しかけてきた眞が不思議だった。
「……発火能力者かな」
答えないあたしをみてそう呟いたと思う。
そしてあたしに目線を合わせるようにしゃがんだ。
「僕は眞。君の名前は?」
「みつき……おにい…さん…は、みつきが、こわくないの?」
おそるおそる聞いてみた。
そしたら眞は頭を軽く撫でて言った。
「こわくないよ。僕もね、君みたいな力を持ってるから……。ねえ、僕と一緒に来てくれるかな?」
いま考えると、なんか誘拐されそうな言葉だけど、その時は危険だとは思わなかった。
だからあたしはうなずいた。
そうすると眞は微笑んであたしを抱き上げ、歩きだした。
「どこにいくの?」
あたしは聞いてみた。
「君みたいな力を持った人たちがたくさんいるところだよ。だから安心して。」
そう言って、眞はあたしをぎゅっとだきしめて背中を優しく撫でてくれた。
あたしは泣きそうになって、それに気づいた眞は泣いてもいいよといってくれた。
どうして涙が出てくるんだろう、家を飛び出したときには泣かなかったのに。
眞はあたしが泣き止むまでずっとだきしめていてくれた。

火は、いつのまにか消えていた。




――――――

実は8月ごろに書いた話です。
ですがまだこの話はまだかいてないVioletのみっきの話なのでサイトに載せませんでした。
しかし3ヶ月更新無しは止めようと思ったのでとりあえず載せてみました。
いずれVioletとかその他のネタ群たちを文章にしたいです。
しかしいつになることやら……

*補足……というかなんというか*
この話の主人公光稀(わたしはみっきと呼んでます)は異能者です。
というかViolet自体が異能者が出てくる話です。
みっきは霊使いの能力と発火能力を持っています。
眞はまだ秘密にしときます。
みっきの仲間とかも居るんですけどね…
なぜかみっきの過去だけ思い浮かびました。
今度のときには他の仲間の過去を書こうかなあ…


執筆日2009.8月のいつか。